医学の限界

  心臓は発電所とされる洞結節から拍動用の電気信号が右心房に送られ、それが伝わって左心室が拍動する。

 だが、どういうトラブルが起こったのか、4本の肺静脈の根本(これを起始部という)からも拍動用の電気信号が送られ、本来1か所からだけしか送られない電気信号が合計5か所から右心房に送られることがある。

 するとそれを受けた右心房が1分間に200~300回も拍動する。その全てを心室に送られると心臓は働き過ぎですぐに心不全に陥る。

 それを防止するため右心房は心室に送る拍動の回数を減らすが、極めて不規則になる。これを心房細動性の不整脈と言う。

 それを治療するにはいくつかの方法があるが、それら全てが不完全で不整脈は直らないことが多い。

 これは体のトラブル、病気だ。心臓そのものは健全であっても心臓を動かす周囲の環境に狂いが生じたのだ。この病気には名前はついていないが、症状としては不整脈だ。

 体の一部あるいは複数部が予定された動きをしなくなった状態が病気で、その結果が症状である。

 症状を止めるには病気を治さなければならない。だが高血圧という症状もこの不整脈という症状もその原因である病気がどのように発生したかが分からない。

 医師に不整脈という症状の原因を尋ねると医師は上記のように答えるだろう。だがまだその前があるのだ。

 何故そしてどのような道筋を辿り病気が発生したのか。不整脈の原因である肺静脈起始部がどうして余計な電気信号を発したのかを尋ねるとそれに答えられる医師はいない。

 医学の限界はここにある。心房細動性の不整脈の原因は肺静脈の起始部からも電気信号が出されることによるというだけでは本来の意味の原因を言い表していない。

 それでは根本的な病気の治癒はいくら経ってもできない。何故、どのように(これを機序という)肺静脈からも電気信号が発せられるかを解明して初めて病気の治癒のための方策を講じることができる。

 そんな研究は今のところ誰もやっていない未知の学問分野である。内臓や筋肉あるいは骨に何か異常があってそれが脳に伝わり、脳から肺静脈起始部に電気信号を発せよと間違った指令を出すのか。

 または脳そのものの何かの不具合なのか。いまだ解明しようとする動きさえない。極めて難解で複雑な機序を経てそんな現象(病気)が起こるとは想像できるが、研究者はその端緒にさえ就いていない。

 ウイルスが体内に入ると風邪や肺炎の原因にもなる。医師はここで終わりだ。だがウイルスはどのように細胞に忍び寄り、どのような悪戯をするのか。

 それにはある基本的な方式があるだろう。だが誰も研究しない。多分まだ医学の能力を超えているのだろう。

 だが人類の未来を考える時そんな研究は難しくてもやらなければならない。端緒はある。

 人の体は極めて複雑な機械だ。コンピューターの動きと似た動きをする。また逆にコンピューターが自然に人の動きと同様の動きをするように仕組まれたとも言える。

 コンピューターには動力が必要で、コンセントを通じて電気を導入してそれが動力になる。

 人は食物を摂って動力としている。いずれにしても動力は外部から導入しなければならない。

 コンピューターは電気信号で作動する。人もそうだ。コンピューターの電気信号は導入した電気から由来するが、人は電気を食物から取るのではない。

 体のどこかを摩擦することによって静電気を得ている。歩くと関節がこすれ静電気が生れるし、心臓は絶えず働いている。だから人の体を作動させる電気はどこかが擦れてできるのだ。

 人の体はこのように電気信号で作動しているとするとそれはコンピューターの動きと同様だ。

 それがヒントだ。コンピューターのプログラムは人間が構築するが、人の体は環境に合わせて自動的に作用プログラムを作る。

 コンピューターが情報を得る手段は人を介してであるが、人は情報を目や耳、舌などで自動的に取り入れる。

 そのように人とコンピューターの作動方式は違いがあるが、電気信号により制御されているという点は一緒だ。

 コンピューターのプログラムを作る時に明らかになる方式を研究することによって人の体の作用は少しずつ解明されると期待する。

 我々が医師として会う人は全て臨床医だ。彼らは薬を与え、人が体の病気を自動的に修復するのを手伝うだけだ。

 だれかこの未開発の研究分野に分け入り、人の未来に貢献する人はいないものだろうか。

酒巻 修平

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