睡眠歩行

これは私が編み出した馬鹿らしい術だ。寝ながら歩くのだがもちろんそんなことをできるわけがない。

本当のところは目を瞑りながら歩くのだが何故かすごく楽で気持ちが良い。酔っていて駅からのタクシーがない場合やタクシーに乗るまでの距離ではない時などとても役に立つ。

今はもうできないがもう少し若い時はこれを40分もやった。まだ景気が良いころで酔客が列を成してタクシーを待っていた。私の番がいつやってくるか分からない。

もしかすると1時間も待たなければならいと計算した時、これを思い付いた。安全なところではだいたい5~7歩分くらい目を瞑って歩き、その後目を開け、辺りを確認して目を瞑る。

不思議に疲れないし酔った体を休められるようで快適だった。雨が降るとこれをやるのは難しいので仕方がない。その時は普通に歩くがやはり酔った体にはきつい。

一番邪魔になるのが電柱だ。電柱のところだけ避けて通らなければならないので真っすぐには歩けない。日本の電柱を失くさない政策や東京電力の無策さなどを愚痴りながら歩いていく。

歩く途中でタクシーが通り掛かる時がある。そんな時は家までの残りの距離を考えながらタクシーに乗るべきか、それとも頑張って歩くか、思案のしどころだ。

本当に寝ているのではないから夢は見ない。今日あったことや上記の愚痴を頼りに歩いていく。男の友達は「自分もやってみようか」などと面白がるが女の友達は「危ないからよしなさい」と忠告する。

両者とも私のこの作戦を面白がっている節があり、そういう意味では人に不快感を与えていないと安心する。

一度歩行中に友達に会ったことがあった。友達は何をしているのかと不審な顔をして尋ねる。私はこの快適な歩行を邪魔されたことに少しがっかりして適当にあしらってまた歩行を続ける。

家に帰り着くと不思議に体の酔いも覚め楽になっていることが多い。歩行中に考えたことなどもう忘れているし、後は歯を磨いて寝るだけ。

今度は本当に寝ることになるが、この歯磨きが邪魔くさい。犬や猫のように歯などを磨かなくても良ければどんなに楽かと思うが、最近の犬猫は虫歯になると聞いた。犬猫も堕落したなと思うが彼らはそんなことに頓着しない。

あんな邪魔な電柱が日本には何故多いのだろう。調べると日本の電線の地下ま埋蔵率は韓国より低いと言う。

国土交通省が担当なのか東京電力に責任があるのか、どちらにしてもあんな邪魔なものは早く撤去してもらいたいものだ。

駅から近いところにある不動産はそれだけ価格が高い。睡眠歩行しているとそれが良く分かる。若い人は距離が苦にならないだろうが、60歳を過ぎるとそれがとても嫌だ。

車を利用する手もあるが、飲みたくなったら車をどこかに置いておかなければならない。運転代行会社に頼むこともできるが、料金がタクシーの倍はするので利用する気になることは少ない。

だから最近は電車で仕事場に出かける。意味もなく煩い交通巡査も気にする必要はないし、あの悪名高い駐車監視員に毒着くことも考えなくて良い。

東京は地下鉄が発達しているし中心部ではタクシーを利用することもない。そうするとタクシーの運転手の職を奪うことになるが、これは全て小泉純一郎の規制緩和という悪法の所為だ。我々の責任ではない。

そんなことを考えながら睡眠歩行をするのだが、考えてみれば飲む量を加減すればそんな必要もない。

全て自分の至らなさの成せる業だが、それを考えるのも業腹だ。人というのはなんて自分勝手な動物だと自分を責めたり行政に携わる人物を非難したり、そんなことしていると家に付いた。ああ、本当に寝ることができる。

今日も馬鹿な自分に腹が立つが、もう性格は変えることができない。今週はそんなことを止めようと思ったが、一度やったしまった。ああ。

酒巻 修平

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