日本の都市計画
京都の古い町並みは日本がまだ欧米と本格的な付き合いをしていないころからあまり変わっていないようだ。
だが東京や大阪の中心部は変化を重ねて、昔の面影を留めるところは少ない。
日本は人口密度が大きく、住む場所は限られている。その所為かスペースの有効利用が第一に考えられてきた。
だが時代が移り、欧米の文化が本格的に導入されてからは楽な生活を考え、それに基づいて住宅の仕様も変化
してきた。
ベッドの生活は一度やったら止められない。もしスペースがあれば誰でも寝るだけの部屋、寝室を持ちたいものだ。これほど
便利なものはないし、椅子に座るという生活習慣も快適そのものだ。
酒でも飲んで帰ると布団を敷くのは面倒この上ないし、夏などは布団も敷かず、服装を付けたまま寝る人もいるだろう。和風の
居間と寝室は同一の部屋だ。
日本家屋では一つの部屋が居間になり、客室にもあり、そして寝室も兼用できる。スペースの有効利用ではこれほど効果的な
ものはない。だがいつの間にか洋風の造りが多くなり、今では家族を持っている人では寝室が別になっている家も多いと思われる。
この変化は良いことだろうか。勿論便利さを考えると言いことずくめである。昔から寝室が別に設えられている大きな住宅もあった
だろうが、布団を敷きっ放なしにすることはできないし、やはり手間は掛かる。
居間に座るにもいちいち座布団を出してこなければならなかった。お茶はフロアーに直に置いたし、そうなれば毎日掃除を
しなければならない。
住宅は欧米式に変わった。では衣食がどうだろうか。これも様変わりだ。江戸が終わり、昭和、平成、令和と時代が
進むにつれて、和風の装いは儀式の時か相当な変わり者あるいは職業柄そのような服装をすることが必要とされている人以外は
身に付けることはない。
ただこれは男子に取って活動的ではないとは言えない。袴を穿いて闘争を行ったし、脱ぐ時も面倒ではない。ズボンは足を
いちいち上げなければ脱げない。女性はそうはいかないが、これには何か理由があるだろう。
食はどうだろうか。江戸時代の人は獣の肉は食べなかったし、パンもなかった。発酵技術はあったが、小麦を発酵する
という考えが浮ばなかったのだろう。
お金は昔から重要な生活の資材だ。しかしそればかりを考えていては文化は生まれないし、人柄も偏狭になるだろう。今は
お金第一主義で、無駄な金やスペースを使う造園も行われるこtが少なくなった。住宅やその他の建物もすっかり変わってしまった。
すなわちお金を一番大切に考えるが故に精神を駄目にした。気持ちの余裕がなくなると、お金に執着する。そうするとまた
精神が狭くなる。そんな繰り返しの社会になって良いのだろうか。
今の日本人は発明が得意ではない。それは明治になって欧米の技術を全て真似たからで、もともと発明の技術がなかった
訳ではないだろう。日本固有の事物はいくらでもあるし、日本画などは欧州の画家に多大な影響を与えた。
だが発明ができないということは文化に新しさをもたらさないことを意味する。日本の欧風建築はデザインが貧弱だ。最近
高層マンションが次々に建築されるが、どうもデザインが良くない。アメリカジョージア州、アトランタのビル群を見て比較
すればすぐ分かる。
わけの分からない形をして薄汚いような色のマンションが東京では目立つ。もう少し美しいものを考えられないのだろうか。
そう言えば京都以外の都市では景観に関する条例がないのだろうか。
民家では建売が多い。そうすると全て同じようなデザインである。そんな景観を見て育った子供は家のデザインなど興味
が湧かないだろう。
だが生花、日本庭園、丸窓、灯篭など日本文化に根差す素晴らしい形があるではないか。建築でも五重の塔や寺院の
伽藍。いくらでもまだ日本文化の素晴らしい形を見ることができる。
勿論そんな形を作るのは費用が掛かるが、費用を掛けられる大会社や裕福な人もいるのではないか。これからも高層建築
はいくらでも建てられるだろう。そんな時例えば東京都は景観条例を敷いて、良いデザインを求めないのだろうか。
それにもし欧米の良い所を取るとすれば、全ての道に名前が付いていないのはどういうことだろうか。東京でもいまだに電柱
と電線が街の景観を損ねているし、車の運転にも支障を来す。
電鉄会社の踏切も迷惑この上ない。朝のラッシュ時などでは開かずの踏切というのが各所のあり、交通渋滞が酷い。それなども
国家で資金を低利で貸し付けるとか、責任の所在に関係なく、人の生活を考えれば国にも責任の一端があるはずだ。
交通違反は国の収入源だ。インフラの整備を等閑にしながら、軽微な違反にも多額の反則金を払わす。交通監視員という
緑の親父さんがコンビニの陰に隠れて買い物のために駐車する人の車を駐車違反で反則金を払わせる。何とも情けない警察
の態度に嫌気が差す。
安倍首相の標語は「美しい日本だ」。この言葉は今や死語か。都市は美しくないし、行政は意気地ない。市町村などの
職員の態度はかなり改良された。やろうと思えばできるのではないか。
役人は給料のために仕事をしているのか、仕事のために給料をもらっているのか。何とも能力が低い。
酒巻 修平