英語は世界一発音が難しい言語である

 表題のように主張すると異論を申し立てられるのは目に見えている。しかし私にはどうしてもそうとしか思えない。私は仕事で50年も英語を使っているし、その前にも10年学校で勉強をした。それでも難しいと感じるのは私の言語能力が相当劣っているからかも知れない。

学校を卒業してから3年目くらいのときシャンソンを原語で歌いたくて、日仏学院というところにフランス語を習いに通った。フランス語の発音は英語より簡単だったと思った。その経験からそう言うのである。

約3か月しか習わなかったのに分かるのかと言われるだろうが、英語の発音の難しさを分析した結果が表題の結論だ。時々テレビで英語を母国語としない人が英語を話すのを聞く。誰一人として英語を母国としている人の英語には聞こえない。これも英語の発音が難しいことを証明しているようである。

何故難しいか私の分析は

1. 英語の母音の数が極めて多い

2. 発音される単語の長さがそれぞれ違う

3. 発音の大きさが重要度によって違う

4. 発音が子音で終わることがある

5. 二重子音がある

6. 声が響くところが他の言語とは違う

7. 子音の発音が違いすぎる

8. 言語の変化が速すぎる

まだあるだろうが、今思い付くのを書いてみたら、こんなにあった。それぞれの項目について私の分析を述べたい。

1. 母音は「あ」系が3つ、「い」系が2、「う」系が2、「え」系が2、「お」系が2、重音が1、曖昧音が1。忘れているのもあるかも知れない。現代日本語やイタリア語の母音は5つしかない。だから我々日本人には英語の母音の発音は極めて難しい。

2. ロシア語、フランス語、イタリア語、スペイン語などは欧米の言葉であるから英語と発音が似通っていてもいい筈だ。ところが上記の言葉の発音と英語の発音(特に米語それも西海岸で話される)には大きな違いがある。英語以外のこれらの言葉では一音節の単語は一音節の発音時間、三音節は一音節の三倍の時間を掛けて発音され、一音節の発音の長さが一定である。ところが英語は違う。「on the mountain」という発音を英語でする場合、「on the」は二音節「mountain」も二音節に関わらず「mountain」が「on the」より相当長い。

3. 上記の場合、同様に「on the」の発音が弱く、「mountain」が強く発音される。だから「on the」が聞き取り難い。

4. 単語の発音の最後が子音で終わる場合、日本人には特に発音が難しい。イタリア語やフランス語にはこれがないと思った。英語では「eight」、「people」、「Clark」など頻出する。子音は口のなかの舌の位置とか、口の内部の形、唇、歯の位置などで音が発生しない。これを無声音というが、日本人はこの発音が本当に不得意だ。ある電鉄会社の英語放送で「three」という部分があり、アクセントを「th」の部分に置いている。だから「th」と「ree」の間に母音が入ってしまい、完全な発音ミスだ。

5. これは日本人が乗り越えることが極めて困難な発音方式だ。私の会社は昔「Clark Foam」という米国のメーカーと取引をしていた。この発音が難しい。まず「Cl」が二重子音で「k  f」は続けて発音するのだが、これもそうだ。ほとんどの人が「C」と「l」、「k」と「f」のあいだに曖昧音を挿入して発音する。勿論英語にはなっていない。さらに「a」の発音が日本語にはない。この「Clark Foam」は難しい発音の筆頭格である。因みに「th」や「l」が難しいと学校では教えるが、こんなのは直ぐに慣れて簡単だ。

6. 日本語は特殊な職業以外の人は口先で音を響かせ発音する。英語は口の中が多い。だからアメリカ語の発音は力強く聞こえるのを旨とし、日本語は静か、上品を目的として発音される。その目的が対極的なので、どんなに綺麗なアメリカ語を発音してもアメリカ語に聞こえない。昔宮澤喜一総理がアメリカに行ってアメリカ語を話した。自慢だったらしいのだが、口先で発音していて、私には下手に聞こえた。あれではアメリカと対等に話し合いができないだろう。発音の大きさでもう負けている。実際酷い外交ミスを起こし、日本の経済に立ち直れないほどの傷を残した。

ところで雪が「しんしん」と降るのと「さんさん」と降るのは違う現象だ。前者は少し暗い中での降雪の状態で、後者は明るさを感じる。これは英語にはない表現である。勿論アジアの精神状態、感覚は西洋のものとは違うので、当然とも言えるが、アメリカ人は日本語の本当のあるいは正確な意味を解しようと努力している。日本語のとても上手な外国人は多数いる。いや、ほとんどの外国人は日本語がとても上手い。日本語は難しい言語の一つと言われるが、それは取っ掛かりが困難なだけで、言語としては難しいとは思えない。

「Clark」博士が札幌農学校(現北海道大学)の第一期生との別れのときに言

った「boys, be ambitious」は「少年よ、大志を抱け」と訳されているが、私はこれを誤訳と思っている。「Boys」の部分だ。日本人の感覚では教授は学生より偉い。だから学生には上目線で話すと思っている。アメリカではそうではない。全て平等で教授と学生は単なる立場の違いだと考えている向きが多い。この「Boys」もその観点で訳すと「男どもよ」と訳す方が近い。だからMr.Clarkは自分も含め、「男どもよ、互いに大志を持って人生を楽しもう」というくらいの意味で言ったと信じている。アメリカへ出張に行くたびにいつもこの言葉を思い浮かべる。

酒巻 修平

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