社長から見た社員 - 大会社出身者

大会社の社員であればさぞかし教育も行き届いているし、マナーその他各方面で優秀であろう。と考える。

 中小企業、それも会社の規模が小さければ小さいほど大会社で長年働いた人を社員として雇用してはならないというのが私の社長としての考えだ。

 それは実績に裏打ちされている。小規模な会社において業務は日々小さな創意工夫の連続だ。しかし大会社ではそうではない。

 大会社で創意、工夫ばかりされたら会社の秩序が乱れてしまう。だから会社が構築したシステムで業務を遂行してもらわなければならない。これは当然の要求だ。

 しかし小さな規模の会社ではそんなシステムを作れば、組織や仕事の仕方が硬直化する。絶えず柔軟に対処し、日々状況に応じた仕事をしなければならない。

 ある大きな会社の部長を雇用したことがある。退職した本当の理由は分からない。給料に不満があったのか、会社の行く末を不安視したのか、それとも上司とそりが合わなかったのか。理由を聴いても本当のことは言わない。

 その人は私に日本経済新聞を取って欲しいと言ってきたので、許可した。それからは出勤すると先ず新聞を読み、(9時始業)10時ころから仕事を始める。

 新聞購読料はしれている。しかし会社は要らぬ経費を削減しなければならない。これは金額の問題ではなく、考え方の問題だ。

 ある日私はふと考えた。この人が日本経済新聞を読んで、そこから会社にもたらすものはなんだろう。確かにその人の教養や常識には寄与するだろう。しかし教養や一般知識は自分が幾ばくかの金を投資し得るものだ。業界紙であれば別だが、私は一般紙を会社で読むための購読料と時間を得たえるべきではないと考えた。

 ある日その人に聞いてみた。今日新聞から得た知識はなんですかと。答えたことは「ドルが上昇する気配です」。その人は貿易担当ではない。だからもう一度聞いてみた「そのニュースを業務にどのように生かすのですか」「それは一般常識です」。こんな会話があり、私はその人が自分のための投資をしないことを知った。

 その人は前社で仕入部長だった。部長とは何をする人ですか。そんな質問もぶつけてみた。「部下全員を監督する職務です」「監督とはどういうことですか」「出勤状態や仕事振りを管理するのです」「部下の教育はするのですか」「それは難しいですね。ただ取引している会社のことを話したりします」

 部長の職務とはそのようなことではない。自分は体を動かさず、指示命令を出すのであれば部下5人の働きだけで、自分を含めて6人分以上の仕事をすべきなのだ。できれば10人分くらいの仕事を部全体として達成しなければならない。何故なら部長の給料は部下より多いからだ。

 部長は部下の分からないこと、気が付かないことを手摂り足取り教えなければならない、トラブルが発生すれば部下と一緒に飛んで行き、部下が気持ち良く仕事ができる環境を作り、その他部全てを束ねなければならない。そんなことをできる部長はまずいない。

その人は直ぐに辞めてもらった。9時から10時、まだ部下がいない彼はそんな暇があれば取引先の電話番号を覚える努力でもして欲しい。(彼はまだ少ない自分が担当する会社の電話番号を知るのにいちいち電話帳を繰っていた)

 大会社ではそのような全てのことにシステムができているので、部長と言えども考える必要がない。大会社のシステムは一朝一夕に出来上がったものではない。長年の失敗、成功、時代の変化、そんな全てを考察してできた作品なのだ。作品の鑑賞と作品を制作することは全く違う作業である。小会社は作品の制作を主として考える。

酒巻 修平

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